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よくある質問と回答

スポーツジム、スポーツクラブ、フィットネスジム、フィットネスクラブ、パーソナルトレーニングジム等(以下「スポーツジム等」といいます)に関係するよくある質問と回答です。

ジム休館の場合の会費(その2)

 当スポーツジムのスタッフが10名で送別会の会食を行い、5名がコロナウイルスに感染していることがわかり、クラスターを発生させてしまいました。そのため、2週間スポーツジムを休館にしようと考えています。

 休館にした場合、その期間については、日割り計算により、会員へ会費を返金する必要があるのでしょうか。

画像 ジム休館の場合の会費

回答

 会員・利用規約に返金を行わない旨の規定がない場合には、債務不履行の問題となり、月会費の返金を行う必要があるものと考えられます。

 一方、会員・利用規約に返金を行わない旨の規定がある場合でも、消費者契約法により返金を行わない旨の規定が無効となり、返金を行う必要があるものと考えられます。

ー解説ー

 この問題も、スポーツジムの会員がコロナウイルスに感染していた場合と同じように、まずは、会員・利用規約で会費の返金に関する規定があるかないか、また、会員・利用規約の規定がある場合には、会員・利用規約の内容がどのようになっているかにより判断されることになります。 

まず、会員・利用規約上、スポーツジムの施設が休館となった場合、スポーツジムが会費の返金をするか否かに関する規定がないときは、スポーツジムが会員に対して施設を利用させる義務の履行不能の問題となります。履行不能に、「当事者双方の責めに帰することができない事由」(民法536条1項)が認められる場合には、危険負担の問題(会員が、会費の支払いを拒むことができるか否かの問題)となります。また、債務者の責めに帰することができる事由(民法415条1項ただし書)により、その債務が不履行となる場合、債務不履行の問題(スポーツジムが、会員に対して、会員がスポーツジムの施設を使用できない期間について損害賠償義務を負うか否かの問題)となります。 

 本件では、スポーツジムのスタッフが会食を行った結果としてクラスターを発生させており、コロナウイルスが流行している状況下では、施設の休館について、スポーツジム側に、責めに帰すべき事由があると評価される可能性があります。会員が利用契約を締結している相手は、スポーツジムであり、スポーツジムのスタッフではありません。ただ、債務不履行(契約違反)について定めている民法415条の「債務者の責めに帰すべき事由」には、債務者(スポーツジム)自身の故意・過失だけでなく、信義則上これと同視すべきものとして、履行補助者(債務者[スポーツジム]が債務の履行のために使用する者[スポーツジムのスタッフ]をいいます)の故意・過失が含まれると解されていますので、スポーツジムのスタッフに関する事由は、スポーツジムの「責めに帰すべき事由」に含まれるといえます。このような場合、スポーツジムが、責めに帰すべき事由によって、その施設を会員に利用させる義務を履行できない状況を生じさせていることとなります。

 したがって、会員はスポーツジムに対し、損害賠償請求を行うことができる(少なくとも、その施設を利用することができない期間に相当する会費相当額の請求を行うことができる)と考えられます。すなわち、スポーツジムは、会員に対して、そのような損害賠償義務があることになります。

 次に、スポーツジムが会費の返金をするか否かについて、会員・利用規約に規定がなされており、規定の中で、減額をしない旨が定められているケースでは、その規定の有効性が問題となります。一般的には、会員・利用規約に減額をしない旨の規定がある以上、会員に日割り計算による減額分の返金をしなくてもよいと考えるジムの経営者の方が多いかもしれません。 

 しかしながら、本件において、法律上の原則は、上記のように、スポーツジム側に損害賠償義務が認められると考えるべきであり、このような場合においても日割り計算による減額を行わない旨の規定の法的性質は、債務不履行に基づく損害賠償義務(スポーツジムの契約違反による損害賠償義務)を全部免除する規定であると考えられます。このような規定は、消費者契約法第8条第1項第1号により無効となると考えられますので、日割り計算による減額を行わない旨の規定があったとしても、スポーツジム側は、損害賠償義務の履行として、休館の日数分の会費相当額の支払義務を負わなければならないことになります。

 

(2021.1.25公開)

【参照条文】消費者契約法8条1項

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)

第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する条項

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