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よくある質問と回答

スポーツジム、スポーツクラブ、フィットネスジム、フィットネスクラブ、パーソナルトレーニングジム等(以下「スポーツジム等」といいます)に関係するよくある質問と回答です。

ジム休館の場合の会費(その1)

 当スポーツジムでは、入館時の検温、会員の健康状態の確認等、コロナウイルスの感染が疑われる会員の利用を防止するような形での感染防止対策を行っていましたが、コロナウイルスの無症状患者であった会員が施設を利用していたことがわかり、施設の消毒及びスタッフへのPCR検査を実施するため、スポーツジムの施設を3日間休館にすることにしました。

 休館にした場合、その期間については、日割り計算により、月会費を減額する必要があるのでしょうか。

画像 ジム休館の場合の会費

回答1

会員・利用規約に減額を行わない旨の規定がない場合には、危険負担の問題となり、月会費の減額を行う必要があるものと考えられます。

他方、会員・利用規約に減額を行わない旨の規定がある場合には、減額をしなくともよいと考えられます。ただ、ケースによっては消費者契約法により減額を行わない旨の規定が無効とされ、減額を行う必要性が認められる可能性もあります。

ー解説ー

 日割り計算により減額を行うべきか否かは、会員・利用規約でそれに関する規定があるかないか、また、会員・利用規約に規定がある場合には、会員・利用規約に基づく利用契約の内容が具体的にどのようになっているかにより判断されることになります。スポーツジムの会員・利用規約の内容については、各スポーツジムで様々であり、日割り計算による減額を行うべきか否かは会員・利用規約の内容毎に個別具体的に判断する必要があります。

 まず、会員・利用規約上、スポーツジムが休館となった場合、スポーツジムが会費の減額に応じるか否かについての規定がないときは、民法の規定によることとなります。この場合、会員・利用規約による利用契約において、スポーツジムが会員に対して施設を利用させる契約上の義務が履行できない場合(法律上、「履行不能」といいます)の問題となります。

 スポーツジムの施設の休館について、スポーツジム側と会員側の「当事者双方の責めに帰することができない事由」(民法536条1項)が認められる場合には、危険負担の問題(法律用語ですが、これは、会員がスポーツジムに対して、会費の支払いを拒むことができるかどうかという問題)となります。

 また、「債務者の責めに帰することができない事由によるもの」(民法415条1項ただし書)でないといえる場合、すなわち、スポーツジム側に「責めに帰すること」の事由(法律上、「帰責性」といい、主に、当事者の故意又は過失のことです)がある場合(スポーツジム側に責任がある場合)には、債務不履行の問題(法律用語ですが、これは、契約違反の有無という問題)となり、会員は、施設を利用することができなかった期間について、スポーツジム側に損害賠償請求をすることができることになります。

 本件では、スポーツジムの会員がコロナウイルスに感染していたことがわかったとのことですが、その会員がスポーツジムの施設を利用していた以上、他の会員がそのスポーツジムの施設を利用するとコロナウイルスに感染する可能性があります。そもそも、スポーツジム側は、単にその施設を会員に物理的に利用させる義務だけではなく、その義務の履行の際に、同時に事故や損害の発生を回避する義務を負っているものです。このことを考えると、コロナウイルスに感染することの無い安全な施設を会員に利用させる義務を履行することができなくなっているといえるものです。

 そして、本件で、スポーツジムは、入館時の検温、会員の健康状態の確認等、コロナウイルスの感染が疑われる会員のスポーツジムの施設の利用を防止するような形での感染防止対策を行っていたと評価することはできますが、コロナウイルスに感染していた会員が無症状患者であったことから、その会員のスポーツジムの施設の利用を回避することは困難であったといえます。そうすると、「当事者双方の責めに帰することができない事由」(民法536条1項)(スポーツジム側、会員側双方に帰責性がないこと)によって、スポーツジムの施設が閉鎖されたものと認められ、危険負担の問題(会員が、会費の支払いを拒むことができるか否かの問題)として、会員は、会費の支払を拒むことができ、また、既払いの会費は、不当利得(法律上の原因・理由がない場合に、返金を求めることができる法制度)として返還を求めることができると考えられます(民法703条)。

 他方、スポーツジムが、入館時の検温、会員の健康状態の確認等、コロナウイルスの感染が疑われる会員のスポーツジムの施設の利用を防止するような形での感染防止対策は行っておらず、コロナウイルスに感染した会員がスポーツジムの施設を利用してしまっていた場合には、債務者の責めに帰することができる事由(民法415条1項ただし書)と評価される可能性(スポーツジムに帰責性があると評価される可能性)があります。その場合、スポーツジムによる施設を会員に利用させる義務に不履行が生じたことについて、スポーツジムに「責めに帰する」事由がある(責任原因がある)、すなわちスポーツジムには利用契約に基づく会員に施設を利用させる義務を履行できていないという利用契約違反があることとなります。したがって、会員は、スポーツジムに対し、損害賠償請求を行うことができると考えられます。少なくとも、日割り計算により減額される金額に相当する金額の損害賠償請求をすることができることになります。

 次に、日割り計算により減額を行うべきか否かについて会員・利用規約が規定されているケースですが、スポーツジムが休館となった場合でも、スポーツジムは会費の減額をする義務を負わないというような内容の規定がある場合があります。このような規定は、民法の規定によりスポーツジムが負うことになる会費の返還義務を免除するという法的意味を有するものです。そこで、このような規定がある場合には、その利用契約上また法律上、減額の必要はないものと考えられます(なお、法律上細かい問題ですが、スポーツジムは会費の減額の義務を負わない旨の規約について、スポーツジムの契約違反[債務不履行]に基づく損害賠償義務を免除する意味であるという限度・範囲においては、会員から、そのような規定は、消費者契約法第8条第1項第1号により無効であると主張される可能性があるものです)。

 ただ、そのような規定がある場合でも、利用契約・法律上の問題とは別に、コロナウイルスの流行という特別な事態ですので、会員との今後の関係継続性を考え、スポーツジムとして、会費を減額するという対応を行うという選択肢も考えられます。

 

 以上のように、会員・利用規約でコロナウイルス関連の条文が規定されていないと、スポーツジム側に、その施設閉鎖原因についての責任があるかどうかという帰責性の有無という難しい判断を迫られることとなってしまいます。そこで、会員・利用規約でコロナウイルス等の感染症や伝染病関連の条文を規定することは、必須と言っても過言ではないほど重要となります。  

 ただ、現時点では、会員・利用規約でコロナウイルス等の感染症や伝染病関連の条文が規定されていないケースが多いものと考えられます。今後しばらくはコロナウイルスの流行が続くと考えられることからコロナウイルス関連の規定を設ける必要性が高いといえます。また、感染症や伝染病は、ほぼ定期的に出現することが想定されるものですので、それらに対応できるような会員・利用規約を作成しておくことが重要になります。

 

(2021.1.25公開)

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