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ドローンと法規制

 

弁護士 金井 高志

弁護士 藤井 直芳

1.はじめに

画像 ドローン

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 「空の産業革命」という言葉をご存知でしょうか。

 いわゆる「ドローン」と呼ばれる小型無人航空機が検査、撮影、物流等の多方面に技術的革新をもたらすことを「空の産業革命」と呼んでいます。今や、ドローンに関する注目度は、日を追うごとに増すばかりです。
 
そこで、フランテック法律事務所として、2017年の後期のフランテック法律事務所のクライアント向けのセミナーのテーマとして、ドローンを選びました。本コラムでは、ドローンに関する法規制について説明したいと思います。
 
まずは、ドローンの基礎知識と、最も主要な規制である航空法による規制をご紹介します。

2.ドローンの基礎知識

画像 ドローン

(1)ドローンの定義

 ドローンの定義は、航空法によってされています。航空法2条22号によれば、「『無人航空機』(ドローン〔筆者注〕)とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。」とされています。

 

(2)説明

 上記の定義では、「(その重量その他の事由を勘案して…)」とありますが、航空法施行規則によってこの条文の文言が具体化されており、重量が200グラム未満(ここでの「重量」とは、無人航空機本体の重量とバッテリーの重量を合計したものをいうとされています。)の小型無人航空機については、無人航空機にあてはまらないとされています。つまり、重量が200グラム未満のドローンであれば、航空法の規制を受けないということになります。

 

3.航空法による規制

(1)航空法の規制対象

 航空法は、無人航空機の飛行に関する基本的なルールとして、飛行の禁止空域(第132条)と飛行の方法(第132条の2)について規定しています。

 航空法の規制対象となる無人航空機については、上記「2ドローンの基礎知識」のところで触れたとおりです。

(2)飛行の禁止空域(第132条)

 航空法は、飛行の禁止空域として、①空港等の周辺の上空の空域(第132条第1号、施行規則第236条第1号)、②地表又は水面から150メートル以上の高さの空域(第132条第1号、施行規則第236条第2号)、③平成27年の国勢調査の結果による人口集中地区の上空の空域(第132条第2号、施行規則第236条の2、国土交通省告示第1141号)を規定しています。

 そして、禁止空域において無人航空機を飛行させる場合には、国土交通大臣の許可が必要であり、許可なく飛行させたときは、50万円以下の罰金が科せられることとなります(第157条の4第1号)。

 したがって、飛行の禁止空域において無人航空機を飛行させる場合には、飛行開始予定日の10開庁日前までに申請書を提出し、事前に国土交通大臣の許可を得る必要があります。

 例えば、東京23区は上記③の人口集中地区に該当するため、東京23区内の屋外において(私有地内を含みます。)、重量が200グラム以上のドローンを飛行させるときは、国土交通大臣の許可を得る必要があります。

4.飛行方法に関する規制

 航空法は、無人航空機の飛行の方法として、以下の6つの条件を規定しています。

  1. 日出から日没までの間において飛行させること(第132条の2第1号)
  2. 無人航空機及びその周囲の状況を目視により常時監視して飛行させること(同条第2号)
  3. 無人航空機と地上又は水上の人又は物件との間に距離(30メートル)(航空法施行規則第236条の4)を保って飛行させること(航空法第132条の2第3号)
  4. 祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空以外の空域において飛行させること(同条第4号)
  5. 爆発物など危険物を輸送しないこと(同条第⑤号、航空法施行規則第236条の5、国土交通省告示第1142号)
  6. 無人航空機から物件を投下しないこと(航空法第132条の2条第6号)

 以下では、この飛行方法に関する規制につき、問題となる点を詳しく解説したいと思います。

(1)目視は自分の目で見なければいけないか?

 航空法132条の2第1号は、「目視により常時監視」と定めていますが、これは自分の目で見なければいけないのでしょうか? モニターや、双眼鏡を通じての監視ではいけないのでしょうか?

 

  1. この規制の意図するところは、安全な航行を行うために、操縦者にドローンの正確な位置や姿勢を把握させ、さらには周囲の状況(樹木等の障害物)の確認をさせることにあります。
  2. こうした規制の意図からすると、モニター越しの目視や双眼鏡による目視は、視野が限定され、瞬時に視野を拡大縮小したりできないため、障害物の察知に時間がかかるおそれがあります。そのような航行は安全とはいえません。そのため、「目視により常時監視」には、モニターや双眼鏡を通した監視は含まれないということになります。​

 

 ドローンの定義は、航空法によってされています。

 航空法2条22号によれば、「『無人航空機』(ドローン〔筆者注〕)とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。」とされています。

(2)信号待ちは、「多数の者の集合する催し」にあたるのか?

 航空法132条の2第4号は、「多数の者の集合する催しが行われている場所の上空」での航行を禁止していますが、例えば、信号待ちや、混雑による人混みは、「多数の者の集合する催し」にあたるのでしょうか?

 

  1. この規制の意図するところは、故障等により落下してしまうと人が怪我等を負う可能性がある場所での飛行を禁じて、安全を確保することにあります。
  2. そのため、この規定が想定しているものは、特定の場所や日時に開催されるものということになります(そう考えなければ、ドローンを飛ばしてよいかどうかの判断が極めて難しくなってしまいます)。

 

 「多数の者の集合」といえるかどうかは、集合する者の人数、規模、密度、主催者の意図といった事情を考慮して判断されます。

 このような視点から考えると、信号待ちや混雑による人混みというものは、主催者がいて、特定の場所や日時に関して開催されるというようなものではありません。そのため、「多数の者の集合する催し」にはあたらないといえるでしょう。

 そして、この点に関して、国土交通省は、以下の表のように考えています。

 

該当する例

 航空法第132条の2第4号に明示されている祭礼、縁日、

展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、

運動会、野外で開催されるコンサート、

町内会の盆踊り大会、デモ(示威行為)等

該当しない例  自然発生的なもの(例えば、混雑による人混み、信号待ち 等)

出典:国土交通省航空局安全部運行安全課長航空機安全課長「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」(平成27 11 17 日 制定 (国空航第690 号、国空機第930 号)) 

5.他人の所有地の上空に関するドローン飛行

(1)所有権の範囲

 民法207条は、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」と規定されています。なぜ、土地の所有権だけ特別に定められているのでしょうか?

 それは、所有権という権利は、物に対する絶対的な支配を認めているところ、土地に関しては、一般的にその地表面だけに支配を認めても意味がなく、その上下に権利を認めないと、土地の有効利用ができないからだと考えられます。例えば、自己所有の土地に、住居を建てようとした時に、当該土地の上空の空間には所有権が及ばないとなると、住居を建てることはできないことになります。これは、厳密に考えると、土地とその上の空間は別のものだからです。

 それでは、他人の土地の上空にドローンを飛行させたら、所有権を侵害したとして損害賠償請求をされてしまう可能性があるのでしょうか? 以下では、土地の所有権を制限することで、他人の土地の上空にドローンを飛行させても損害賠償請求されることを回避できないか検討します。

(2)航空法で土地所有権を制限できないか?

 民法207条には、「法令の制限内において、」という文言が記載されています。この文言を根拠として、土地所有権が上空に及ぶ範囲を制限できないでしょうか?

  1. 航空法の許可を取ることで適法にドローンを飛行させることができることは、前回までのコラムで説明をしました。この航空法の許可を取れば、他人の所有する土地の上空を飛行してもよいことになるのでしょうか?
  2. 前回までのコラムの内容を振り返ってみると、飛行空域や飛行方法についての規制を受けずにドローンを飛行させるには、航空法上の許可を国土交通大臣から取得する必要がありました。この許可は、ドローンの飛行に関して技術的に問題がないかという観点からなされる許可となります。そのため、行政規制に関して許可があるからといって、民事の問題として、他人の所有する土地の上を飛行させてよいということにはなりません。

(3)解釈による制限ができないか?

 それでは、法律の解釈によって土地所有権を制限し、他人の所有地の上空につきドローンを飛行させることはできないのでしょうか?

  1. 土地の所有権は、土地の上下に及びますが、実はその範囲には限度があると考えられています。なぜなら、そのように考えなければ、地球の中心部から、宇宙の外縁まで土地の所有権が及ぶこととなってしまうからです。そのため、土地所有権は「利益の存する限度」にしか及ばないとされています。
     
  2. では、土地の上空において、土地所有権の「利益の存する限度」とはどの程度の高度をいうのでしょうか?
    同「利益の存する限度」を明確に規定した法令はありませんが、航空法では、航空機の最低安全高度が定められています。この高度は、人口密集地域では、最も高い障害物の上端から上空300mの高度、それ以外では地上や水面の人・物件から上空150mの高度とされています。この規定を根拠とすると、土地の所有権は上空300mまでが「利益の存する限度」として保護されていると考えることができます。
     
  3. このように考えると、他人の土地の上空300m以下においてドローンを飛行させた場合、当該他人の土地所有権侵害となってしまいます。
    しかし、例えば、他人の土地の上空100mを一瞬横切った場合であっても、土地所有権の侵害となるかというと、その程度で土地所有者に何かしらの不利益が生じるとは考えられません。このような場合、仮に当該土地所有者が不法行為に基づく損害賠償をしたとしても、その請求は権利の濫用(民法1条3項)として認められないのではないかと思われます。
     
  4. そうすると、他人の土地の上空にドローンを飛行させた場合、所有権侵害となるかどうかは、行為態様・侵害の程度・侵害を行った時間といった要素を総合的に考慮して考えるものと思われます。

6.空撮と被写体の権利

(1)問題となる具体例

 例えば、有名な建築物につきドローンによる空撮をしようとした場合、建築物に関する著作権や建築物の所有者の所有権との関係で問題となるのでしょうか?

(2)著作権

  1. 建築物が著作権法の保護を受けるには、芸術的価値が必要とされています。そのため、実用的な建築物であれば、著作物としての保護を受けることはなく、特に問題なく空撮が可能となります。
  2. また、屋外に恒常的に設置されている建築物については、著作権法第46条(公開の美術の著作物等の利用)によって、その建築物が著作物であっても利用することができるとされています。そのため、ドローンによる空撮程度であれば問題なく可能となります。
  3. ドローンで空撮を楽しんでいる際に、その気はなくても、建築物が写り込んでしまうような場合がありえます。このような場合、撮影態様等からして、「著作権者の利益を不当に害さない場合」(著作権法第30条の2)であれば、問題となりません。
  4. 以上から、通常のドローンによる空撮であれば、建築物に関して、基本的には著作権法は問題となることはないといえます。

(3)所有権

  1. では、ドローンによる空撮をすることで、建築物の所有権を侵害したことにはならないのでしょうか?
  2. 所有権は、前回のコラムでお伝えしたように、(有体)物を支配する権利です。ひらたくいえば、その物としての現実の存在を支配する権利となります。そして、ドローンによる空撮を行った場合、その物としての現実の存在を侵害したわけではありません。
  3. そのため、ドローンによる空撮を行っても、建築物の所有権を侵害することはなく、問題となりません。

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