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法定開示書面の記載事項の留意点

 前回は「法定開示書面とは」というタイトルで、法定開示書面とはどのようなものであるかについて説明をしました。今回は、本部が法定開示書面を提示する際、どの部分を留意するべきかについて、説明していきたいと思います。

 

■法定開示書面の内容

 前回、法定開示書面には以下の事項が記載されているということを説明しました。

 Ⅰ 本部の概要

  1. 本部の会社名・住所・従業員数・役員名
  2. 営業日・営業時間
  3. 出資額・株主・子会社に関する情報
  4. 財務状況
  5. フランチャイズ事業の開始時期、加盟店数の推移、フランチャイズに関する訴訟件数
  6. 立地条件が類似する店舗の過去3年間分の収支

 Ⅱ 契約内容

  1. 加盟店から徴収する金銭に関する事項
  2. 経営指導の内容
  3. 加盟店の義務に関する事項
  4. 契約違反のペナルティ
  5. 加盟店に対する商品の販売条件に関する事項
  6. 使用される商標・商号
  7. 契約期間・更新及び解除に関する事項

 

■法定開示書面について本部の留意すべき点

 法定開示書面のこれらの事項につき、本部として、どの部分を留意すればよいのでしょうか。 

 特に留意していただきたい箇所がⅠの5に関する部分とⅠの6に関する部分です。

 Iの5に関する部分には、ⅰ)フランチャイズ事業の開始時期、ⅱ)直近3事業年度における加盟店の店舗数の推移、ⅲ)直近5事業年度におけるフランチャイズ契約に関する訴訟件数が記載されており、以下ではそれぞれを分けてご説明します。

 

 まず、「ⅰ)フランチャイズ事業の開始時期」が最近であった場合、加盟希望者から、本部は未だ本部としての体制やマニュアルなどが整っていないと判断される可能性がありますので、そのことについて留意しておいてください。

 

 また、「ⅱ)直近3事業年度における加盟店の店舗数の推移」には、各事業年度における①加盟店舗数、②加盟店の新規出店数、③契約が解除された店舗数、④契約が更新された店舗数、⑤契約が更新されなかった店舗数が記載されています。この中で最も重要なのは、事業年度ごとの①加盟店舗数です。事業年度ごとに加盟店舗数が増えていれば、本部や加盟店が順調であるものと加盟店希望者に判断されることになるでしょう。ただ、加盟店舗数が増えているのに、③契約が解除された店舗数や⑤契約が更新されなかった店舗数が多い場合には、本部と加盟店との間でトラブルが生じ脱退する加盟店の数を新規加盟店募集で無理に補っていると加盟店希望者に判断される可能性があるので注意が必要といえます。

 

 また、「ⅲ)直近5事業年度におけるフランチャイズ契約に関する訴訟件数」を見て、本部と加盟店との間で訴訟が数件でも生じている場合にも、本部に何らかの問題が生じていると判断される可能性があります。ただ、本部が加盟店から理由のない訴訟を起こされている可能性もありますので、本部としては、訴訟の内容について、加盟希望者に対し、適切な情報を提供することができるようにしておくことが重要といえます。

 

 Ⅰの6に関しては、令和3年に中小小売商業振興法施行規則が改正されたことにより、新たに記載すべき事項となったものです。

 「収支に関する事項」として記載する必要がある項目は、より具体的には、各事業年度における①売上高、②売上原価、③商号使用料、経営指導料その他の特定連鎖化事業を行う者が加盟者から定期的に徴収する金銭、④人件費、⑤販売費及び一般管理費(③及び④に掲げるものを除く)、⑥①から⑤までに掲げるもののほか、収益又は費用の算定の根拠となる事項が挙げられます。

 本部としては、加盟店の収支に関する事項について、上記①から⑥までのすべてを把握できているわけではありません。そのため、開示できる情報と開示できない情報を整理して把握し、現段階で開示できる情報だけで開示として十分といえるか、追加的に調査する必要がある情報がないかを検討しておくことが重要です。

 次に、「立地条件が類似する」店舗であると判断した根拠を記載する必要があります。立地条件が類似しているかの判断要素は、主だったものを例示的にとりあげて示すことで足りると解されており、㋐周辺の就業人口、世帯人口、㋑周辺の交通量、㋒公共交通機関等の施設の有無、㋓営業時間、㋔立地区分(幹線道路沿い・街中・住宅街立地・施設内立地・特殊立地等)、㋕契約形態、㋖競争環境、㋗その他業態固有の要素などから、本部が現に把握しているものを記載すれば問題ありません。

 開示できる情報であっても、どの加盟店の情報であるかを特定されないように、開示の方法を工夫する必要があります。

 

 

 その他、加盟希望者が、Ⅰの4の箇所にある本部の貸借対照表や損益計算書の情報をみることにより、本部の経営状況を確認することがありますので、経営状況について説明できるようにしておく必要があります。

 

 なお、本部が立てた売上・収益予測は、法定開示書面に記載すべき事項とはされておらず、本部から別の書面で開示する場合が多いと思います。そこで、その算定を合理的なものとすることも忘れないでください。そのときには、コンサルタントなどの専門家に相談をしておくことがよいと思います。本部・加盟店間の訴訟の理由として一番多いものが、本部が立てた売上・収益予測が誤りだったのではないかという理由だからです。

 

まとめ

 以上、法定開示書面の留意点について説明をしました。加盟希望者に加盟をしてもらうため、法定開示書面を作成する際に、特に注意してもらいたい箇所として紹介した部分を中心に、適切に説明をすることができるようにしておくことが大切であると思います。

 

 

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