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法定開示書面とは

 

 フランチャイズ本部を構築する際には、フランチャイズ契約書だけでなく法定開示書面も必要となります。フランチャイズ契約書が必要なことは知っているが法定開示書面まで必要とは知らなかったという人もいらっしゃるかもしれません。そこで、法定開示書面について説明をします。

 

■ 法定開示書面とはどのような書面か

 加盟希望者が加盟したい本部を決め、本部にその意思を伝えた場合には、本部は、中小小売商業振興法という法律で規定されている法定開示書面を加盟希望者に提示し、この法定開示書面についての説明を行うことになります。

 そこで、この法定開示書面とはどのようなものかを具体的に説明していきましょう。加盟希望者としては、加盟の際にフランチャイズ契約書を締結することになりますが、いきなりフランチャイズ契約書だけを見てもその内容を理解するのはなかなか難しいものです。

 

そのため、中小小売商業振興法という法律は、本部の会社概要やフランチャイズ契約書の内容を分かりやすく要約して記載した書面を加盟希望者に事前に交付し、その内容を説明することを本部に義務づけているのです。

 

中小小売商業振興法により定められていることから、この書面は法定開示書面と言われているのです。この法定開示書面は、「フランチャイズ契約の要点と概説」、「契約のあらまし」など他の名称で作成されることもあります。

 

■法定開示書面の交付・説明義務を負う本部とは?

法定開示書面について、一つ注意をしておかなければならないことがあります。中小小売商業振興法における法定開示書面の交付・説明義務は、小売業と飲食業でフランチャイズ展開をしている本部のみに課されているだけなのです。したがって、この法律では、サービス業でフランチャイズ展開をしている本部には法定開示書面の交付・説明義務を負わせていません。 

 

しかし、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」という独占禁止法に関するガイドラインにおいて、サービス業の本部についても「開示が的確に実施されることが望ましい」とされています。そこで、実務上は、サービス業でフランチャイズ展開をしている本部も、自らがサービス業であることを理由に加盟希望者に対して法定開示書面の交付・説明をしないということはしていないものです。法定開示書面の交付・説明をしないというのであれば、そのような本部は公正さを欠く本部であると判断される恐れがありますので注意が必要です。

 

■ 法定開示書面の内容とは?

 次に、具体的にどのようなことが法定開示書面に記載されているかを説明しましょう。中小小売商業振興法の第11条が、本部により法定開示書面に記載されるべき事項を定めており、法定開示書面には、大きく分けて、①本部の概要と②フランチャイズ契約の内容について記載すべきものとされています。 

具体的に説明をすると、①本部の概要としては、

  1. 本部の会社名・住所・従業員数・役員名
  2. 営業日・営業時間
  3. 出資額・株主・子会社に関する情報
  4. 財務状況
  5. フランチャイズ事業の開示時期、加盟店数の推移、フランチャイズに関する訴訟件数
  6. 立地条件が類似する店舗の過去3年間分の収支

などが記載すべきものとされています。

 このうち、立地条件が類似する店舗の過去3年間分の収支については、令和3年に中小小売商業振興法施行規則が改正されたことにより、新たに記載すべき事項となったものです。具体的には、当該店舗について立地条件が類似すると判断した根拠に加え、当該店舗の各事業年度における売上高、売上原価、商号使用料、経営指導料その他の特定連鎖化事業を行う者が加盟者から定期的に徴収する金銭、人件費、販売費及び一般管理費などを記載することになります。

 

また、②契約内容としては、

  1. 加盟店から徴収する金銭に関する事項
  2. 経営指導の内容
  3. 加盟店の義務に関する事項
  4. 契約違反のペナルティ
  5. 加盟店に対する商品の販売条件に関する事項
  6. 使用される商標・商号
  7. 契約期間・更新及び解除に関する事項

などが記載すべきものとされています。

 

 まとめ

 以上、法定開示書面の概要について説明をしました。法定開示書面については、分量が多く、法律の知識がない方が作成するのはなかなか難しいと思いますので、作成の際には弁護士に相談をすることがよいと思います。当事務所での御相談でも、本部の方が作成した法定開示書面の精査(リーガルチェック)の御依頼の事例がありますが、作成方法をご存知ないために多くの無駄な作業をしている場合もしばしば見受けられます。そこで、法定開示書面の作成の準備段階で、弁護士に相談をすることで、社内における無駄な作業を防ぐことができると思います。

  次回は、特に法定開示書面のどの部分に注意すればよいかについて、詳しく説明したいと思います。

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