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今回で「ライフログ」に関するブログも最終回です。
そこで、最後に、企業のみなさんに、「ライフログ」に関する適切な取扱方法について提案させていただこうと思います。
すでに第2回目「マーケティングにおけるライフログの意義と定義」で説明したように、ライフログの意義は多様です。
そして、確認になりますが、弊所としては、以下のように、ライフログの定義を一応提示しています。
ここで改めて具体例を挙げてみると、私のような30代の男性が検索エンジンで「温泉」というワードを検索した場合、年齢や性別や検索ワードも「ライフログ」と言えるものです。
しかし、これらの情報については、企業に取得されていても、顧客や消費者として特に大きく嫌悪感を抱くことはあまりないものと思います。
これに対して、ある人の病院への通院歴や性生活のようなものは、その人の機微情報(センシティブ情報)といえ、これもライフログにあたります。
しかし、このような機微情報(センシティブ情報)は、通常、他の者に知られることについて不快な思いを抱くものであるはずです。
このように、「ライフログ」と一言でいっても、「ライフログ」を取られてしまう顧客や消費者の視点から見ると、企業に取得されても問題のない情報から、不快な思いをする情報まで多くの情報があるものです。
特に、通院歴や性生活のような機微情報(センシティブ情報)については、顧客や消費者は一般的にこれを企業に取得されると不快な思いをすると思います。
そのため、一般的には、企業は機微情報(センシティブ情報)を取得しない方が良いと言われています。
しかし、企業としては、事業上の必要性から様々な「ライフログ」を取得することとなるでしょう。
その際に、法的なルールの遵守(コンプライアンス)という点からは、
どのような情報をどのような目的で取得し、どのように取り扱うのかをプライバシーポリシーやライフログポリシーで明示すること
が重要になります。
ただ、それらを単純に明示すればよいというものではなく、実際に顧客や消費者がそれらの情報を取得されてしまうことに対してどのような感情を抱くのか、顧客や消費者の視点に立ちかえって改めて検討する必要があります。
法的に合法であるということと、顧客や消費者から企業に対するイメージの問題(広い意味では企業のレピュテーションの問題)は異なりますからね。
今日のようなデジタル社会においては、極めて多くの企業が顧客や消費者の「ライフログ」を取得しているでしょう。
「ライフログ」を取得するすべての企業は、法的ルールを遵守し、かつ、顧客や消費者からのレピュテーションに配慮した対応をすることが期待されているものと思います。
前回、2012年7月17日の朝日新聞の記事で、TSUTAYA(ツタヤ)を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)が、Tポイントカードを利用しているユーザのライフログである医薬品購入履歴(商品名等)を取得し、これをマーケティングに利用しているという報道があったことの説明をしました。
今回は、CCCによるTポイントカードでのライフログの取得とマーケティング利用についてどのような法的問題があるかを説明します。
CCCは、T会員規約(2011年10月1日改訂版)第4条(個人情報について)第2項において取得する情報の種類を規定しています。
具体的には、
などの情報をCCCは取得していると規定しています。
さらに、このような情報の利用目的については、同条第3項において規定されています。具体的には、(3)において「会員のライフスタイル分析のため」と規定しています。詳細はこちらのURLを参照していただくと分かると思います。
(T会員規約第4条)
例えば、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会第二次提言」(2010、総務省)において、事業者が「ライフログ」を取り扱うにあたって配慮すべき事項をまとめた「配慮原則」があります。
この「配慮原則」では「透明性の確保」が要求されていて、企業が顧客や消費者に明示すべき項目として、
などの事項が記載されています。
このことからすると、「ポイントプログラム参加企業における利用の履歴」や「サービスご利用内容」というCCCが明示しているCCCが取得する情報は、配慮原則が透明性の確保において要求している取得される情報の項目として十分であると評価されうるものです。
また、ライフログ取得の利用目的について、「会員のライフスタイル分析のため」とCCCは明示しています。
このことから、CCCが取得するライフログの利用目的は、配慮原則が透明性の確保において要求している利用目的として十分であると評価されうるものといえるでしょう。
したがって、CCCによるユーザの購入履歴(ライフログ)の取得と利用は、現時点では法的には問題がないものと思われます。
しかし、今回の報道によると、顧客や消費者から見ると、透明性が確保されているとは言い難いと判断されているように思われます。このあたりは、企業側から見るか、顧客側から見るかで、判断が異なる問題といえそうですね。
今回は、Tポイントカードによるライフログの取得とマーケティング利用に関する法的な問題点を簡単にみてきました。
では、このような問題があるとして、企業はどのようにライフログを取得し利用していけば良いでしょうか。この点は、次回説明させていただこうと思います。
次回:ライフログの適切な取扱方法
「Tポイントカードで顧客の医薬品購入履歴(ライフログ)を取得・利用」
2012年7月17日の朝日新聞の記事で、TSUTAYA(ツタヤ)を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)が、Tポイントカードを利用しているユーザの「ライフログ」である医薬品購入履歴(商品名等)を取得し、これをマーケティングに利用していることについて問題があることが報じられています。
(ネット上の報道記事なので既に削除されている可能性があることをご理解ください。)
【医薬品の購入履歴に関してアメリカで発生した事例】
2012年1月頃、アメリカの大手ディスカウント百貨店チェーンが、女子高生宅に対して、ゆりかご等の妊婦を対象としたクーポンを送ったところ、これを見た女子高生の父親が、「娘に妊娠することを勧めているのか!!」と激怒して、このチェーンに対してクレームを出したという事例があります。
この百貨店チェーンは、女子高生の妊娠検査薬の購入履歴(ライフログ)から、その女子高生が妊娠していると推測し、マーケティングの一環(行動ターゲティング広告)として、その女子高生に対してゆりかご等の妊婦を対象としたクーポン送付していました。
このアメリカの事例は、このチェーンが女子高生の購入履歴(ライフログ)から推測した通り、その女子高生は実際に妊娠していたことから、父親が後日そのチェーンに謝罪したことで終わったようです。
朝日新聞の記事によると、CCCは、医薬品の購入履歴(ライフログ)を、「品ぞろえの拡充、見直しに使う」としていることから、各顧客の購入履歴(ライフログ)を分析して、その顧客に対して、直接的に広告を送るような「行動ターゲティング広告」を行っていないようですので、Tポイントにおいて、アメリカのような具体的な事例は生じていないようです。
しかし、このアメリカの事例のように、医薬品に関してCCCが「行動ターゲティング広告」を送るようになれば、アメリカと同様の問題が生じる可能性も否定できません。
顧客の購入履歴(ライフログ)を取得・利用する企業は注意が必要になると思います。
つまり、Tポイント報道では、このようなアメリカの事例で問題となった購入履歴(ライフログ)をCCCが取得しているものの、行動ターゲティング広告のような利用方法を現時点では採用していないということがポイントになると思います。
さて、ここで一つ気になる点があります。このように、朝日新聞に報道されたCCCのTポイントによる購入履歴(ライフログ)の取得・利用は、法的にどのような問題があるでしょうか?
この点については、次回解説することにしましょう。
次回:「最近の報道(2)~Tポイントによるライフログ取得の適法性~」
今や良いモノ(サービス)を作れば売れるという時代ではないですね。
また、顧客の好みは様々なので、どのようなモノ(サービス)をどのような顧客に届ければ売れるかを把握するために、顧客側の視点が重要なことはご存じのとおりです。
つまり、マーケティングや行動ターゲティング広告においては、顧客を理解する必要性があり、そのための顧客分析がとても重要な意味をもっています。
コンピュータやインターネットが普及していない約15年前では、顧客を理解するために、さまざまなアンケート調査を行ったりしていましたが、精度の高いデータを取得することは難しい状況でした。
しかし、現在では、簡単にパソコンやスマートフォンなどを利用することによって、かなり正確な顧客の情報(ライフログ)を入手できるようになっています。
そのため、現在では、そのような顧客の情報である、いわゆる「ライフログ」を用いて、かなり正確な顧客分析を行うことが極めて重要になっているのです。
そこで、今回は、「ライフログ」の意味・定義を考えてみることにします。
総務省『利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会第二次提言』(平成22年5月)では、「ライフログ」とは「蓄積された個人の生活の履歴」とされています。
新保史生「ライフログの定義と法的責任」(情報管理53巻6号[2010年9月号]296頁)では、次のように、緻密に定義がなされており、とても参考になります。
「ライフログ」とは
の総称をいう。
そして、インターネットで検索してみると分かるように、「ライフログ」は、他にもいろいろな定義付けがなされています。
そこで、他のいろいろな定義もふまえて検討した結果、一応、暫定的にですが、現在のところ、弊所で考えている要素を入れた「ライフログ」の定義は次のようなものになります。
(暫定的な内容ですので、検討の結果、今後、変わる可能性もあります。)
簡単にいうと、みなさんがパソコンやスマートフォンなどを通じて、インターネットでいろいろと検索したり、閲覧したり、購入したりしている行動の全てが「ライフログ」になると思ってもらえれば良いと思います。
つまり、企業がマーケティングで利用している顧客に関する多くの情報は、「ライフログ」にあたるということです。
では、企業がマーケティング(行動ターゲティング広告など)において、そのような「ライフログ」を扱う際に注意すべき点はどんなことでしょうか。
この点については、次回から、最近Tポイントカードに関して報道された事案と共に説明していこうと思います。
次回:「最近の報道(1)~Tポイント報道のポイント~」
弊所では、約15年前から、IT関係のビジネスの法的問題についてアドバイスをしています。
また、インターネット通販に関する法律問題の研究をしてきています。
私を始め、弊所において、最近、興味をもって研究しているテーマは、「ライフログ」です。
これは、インターネット通販におけるマーケティングにおいて極めて重要なものです。
私自身、様々なIT系ベンチャー企業のお手伝いをさせていただく中で、
「ライフログ」は重要であると感じています。
そこで、弊所では、2012年6月に、「ライフログ」をテーマにして、クライアント様向けのセミナー・講演
「マーケティングにおけるライフログ(行動履歴)活用の法律問題」を開催させていただきました。
WEB2.0という用語が使われ始めた2005年ころから、「ライフログ」という用語がビジネス用語として使用されています。
しかし、まだ、「ライフログ」という用語は、一般的にはあまりなじみのない言葉であると思いますので、事例を挙げて説明したいと思います。
みなさんが日常的に利用しているAmazonや楽天などで、インターネット通販を利用した場合、ウェブサイトを閲覧すると、「最近チェックした商品」や「おすすめ商品」が表示されます。過去にそのサイトで買い物のために閲覧した商品や関連商品が表示されているものです。
これは、それらの事業者が、そのユーザが利用しているパソコンからのサイトへのアクセス履歴や閲覧履歴、検索ワードといったユーザの行動履歴を記録して保存していることを意味するものです。
このようなインターネットにおけるユーザのサイトのアクセス履歴や閲覧記録、検索ワードなどの行動履歴に関するデータがいわゆる「ライフログ」といわれるものです。
「ライフログ」は、マーケティングにおいて極めて重要なものです。しかし、個人のプライバシーとの関係や、個人情報保護法上の問題などいくつもの法的問題を含んでいます。
そこで、今回は、「ライフログ」に関する法律問題の重要なポイントを、今回を含め全5回にわたって説明していきたいと思います。
次回:「マーケティングにおけるライフログの意義と定義」
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