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IT企業の労務リスクマネジメントQ&A

SEであれば誰にでも専門業務型裁量労働制を適用できるというわけではありません。

専門業務型裁量労働制の対象業務である「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、次に記載する業務をいうとされています。

  1. ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定およびその方法に適合する機種の選定
     
  2. 入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等
     
  3. システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務

対象業務にはプログラムの設計・作成を行うプログラミングの業務は含まれないことから、専ら他人の具体的な指示を受けて裁量権のないプログラミングなどを行う者や、CD-ROMなどの製品の製造を行う者は、対象外とされます。

また、プロジェクトマネージャーの管理下において、数人でプロジェクトチームを組んで業務遂行・時間配分を行う場合は、専門業務型裁量労働制が適用されるケースに該当しないとされています。

労働基準監督署から是正勧告を受けたり、元従業員から未払い残業代請求訴訟を提起されたりする可能性があります。

専門業務型裁量労働制の適用要件を満たさないSEに対して裁量労働制を適用するなど、会社が裁量労働制を不適切に適用している場合、労働基準監督署への申告などにより監督官による調査が実施される可能性があります。

調査の結果、不適切適用の事実が発覚したときは、労働基準監督署から未払いの時間外割増賃金の支払いを含めた是正措置が求められることがあります。
 

また、SEが退職後に会社に対して訴訟を提起して、未払いの時間外割増賃金やそれと同額の付加金の支払いを求めてくることが考えられます[SEとして勤務していた元従業員からの時間外割増賃金請求に対し、裁量労働制の適用を認めず、元従業員の請求を認めた事例(平成23.10.31京都地裁判決)]。
 

さらに、会社が裁量労働制の適用要件を満たさないSEに対して不適切に裁量労働制を適用し、労働時間の管理が適切に行われていないことで長時間労働が恒常化し、結果として健康障害や精神障害を発症するなどした場合、会社の安全配慮義務違反が厳しく問われる可能性があります。
 

こうしたリスクを回避するためにも、専門業務型裁量労働制の適用要件を満たさないSEについては、通常の従業員と同様の扱いとすることが必要とされます。

深夜まで働くSEを社内に宿泊させたり、近隣のビジネスホテルに宿泊させたりしていますが、問題はありますか?

会社の安全配慮義務違反が問われ、多額の損害賠償請求が認められる可能性が高いものと思われます。

過重な労働により健康障害や精神疾患を起こしたり、過労死する者が出て訴訟となった場合には、会社の安全配慮義務違反が問われ、多額の損害賠償請求が認められる可能性が高いものと思われます。

SEなどの技術者にはおとなしくて真面目な性格の人が多く、仕事熱心なあまり、食事もろくにとらず昼夜を問わず働き続け、終電を逃せば職場の机に突っ伏して寝てしまう者がいたりするものです。
 

ただ、SEなどのIT技術者のうつ病の発症率は、一般企業の会社員と比べて2~3倍ほど高いという指摘もあります。

精神障害などの労災請求件数は2年連続で最高となっており(「平成22年度 脳・心臓疾患および精神障害などの労災補償状況まとめ」厚生労働省)、労災認定件数も急増しています。
 

このような状況の中で、社内や近隣のビジネスホテルに宿泊させるなど、会社が長時間労働を助長していると評価されかねない対応をとっていることには問題があるものと思われます。

過重な労働により健康障害や精神疾患を起こしたり過労死する者が出るなどして、訴訟となった場合には、会社の安全配慮義務違反が問われ、多額の損害賠償請求が認められる可能性が高いものと思われます。

裁量労働制を適用しているSEの健康管理について注意すべき点はありますか?

専門業務型裁量労働制で勤務する労働者の健康及び福祉を確保する措置については、企画裁量型裁量労働制における措置と同等のものとすることが望ましいとされています。

会社は、労働契約上、従業員を業務に従事させる際に、過度の疲労や心理的負担をかけて従業員の心身の健康を損なうことがないように注意する義務(安全配慮義務)を負っています。裁量労働制がとられている場合でも、このような会社の安全配慮義務は軽減されるものではありません。

裁量労働制におけるみなし時間は、あくまでも労働基準法の労働時間の算定にあたっての「みなし」であり、会社の安全配慮義務が問題となる場面では、現実の労働時間が問題となるのであって、みなし時間をベースにして判断がなされる訳ではありません。

このことは、労働基準法において専門業務型裁量労働制で勤務する労働者の「労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置」を労使協定で定めることが必要とされていることからも明らかです(第38条の3第1項第4号)。
 

専門業務型裁量労働制で勤務する労働者の「健康及び福祉を確保する措置」の具体的内容については、労働省告示第149号(平11.12.27)で示される企画裁量型裁量労働制における措置と同等のものとすることが望ましいとされています。

健康・福祉を確保するための措置

  • 把握した対象労働者の勤務状況やその健康状態に応じて、代償休日または特別な
    休暇を付与すること
  • 把握した対象労働者の勤務状況およびその健康状態に応じて、健康診断を実施する
    こと
  • 働き過ぎ防止の観点から、年次有給休暇についてまとまった日数を連続して取得することを含めてその取得を促進すること
  • 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
  • 把握した対象労働者の勤務状況および健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
  • 働き過ぎによる健康障害防止の観点から、必要に応じて、産業医等による助言、指導を受け、または対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること

(厚生労働省リーフレット「専門業務型裁量労働制」より)

顧客の事業所に直行直帰している従業員の就労実態を把握できていませんが、事業場外のみなし労働時間制を適用しているので問題ないですよね。

会社はすべての従業員の労働時間を適正に把握して管理する義務を負っています。みなし労働時間制を適用している従業員についても例外ではありません。

会社は、賃金や割増賃金の支払および従業員の健康配慮の観点から、従業員の労働時間を把握する義務を負っています。この点については、次のような通達があります。

  • 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」
    (平成13.4.6付基発339号)
  • 「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」
    (平成15.5.23付基発0523003号)

これらの通達では、「労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定していることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有していることは明らかである。」としています。

労働時間の管理に関する労働基準法の規定は、いわゆる管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者については適用が除外されますが、通達では、「本基準の適用から除外する労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務がある」としています。

要するに、会社はすべての従業員の労働時間を適正に把握して管理する義務を負っているのです。

取引先に常駐している従業員の労働時間を把握できていないことによるリスクには、具体的にどのようなものがありますか?

法令違反のみならず、未払い賃金の請求、労災認定、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求など、あらゆる場面で生じることになります。

労働時間を含む従業員の就労実態を把握できていないことによる会社のリスクは、法令違反のみならず、未払い賃金の請求、労災認定、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求など、あらゆる場面で生じることになります。

従業員の就労実態を把握できていない場合、会社には様々なリスクが生じます。

たとえば、退職した従業員から未払い割増賃金請求訴訟を提起された場合、会社が労働時間に関する記録を有していなければ、従業員の電子メールの送信時間やブログ・ツイッターなどに書き込んでいた内容等から推定される労働時間を参考にして割増賃金の算定がなされる可能性があります。未払い割増賃金と同額の付加金の支払請求についても、裁判所に認容されてしまう可能性が高いものと思われます。
 

また、従業員が健康障害や精神疾患を起こしたり、死亡した場合、本人または遺族から労災申請がなされと、会社は労働基準監督署から当該従業員の労働時間等に関する資料の提出を求められることになります。

この場合、会社が適正な記録を有していなければ、当該従業員が保有している記録やメモ、電子メールの送信記録、パソコンのログデータ、関係者からのヒアリング内容などをもとに、労災認定の判断がなされることになります。
 

さらに、万一、従業員が死亡し、遺族が会社に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を求める訴訟を提起した場合、会社側に就労実態を把握していないなどの事情が認められれば、数千万円、場合によっては1億を超えるような多額の損害賠償請求が認容されてしまう可能性が高くなるものと思われます。
 

このように、取引先に常駐している従業員の就労実態を把握できていないことによる不利益は、当該従業員ではなく会社が負うことになります。そして、そのリスクの大きさに鑑みれば、会社としてかかる状態を放置すべきでないことは明らかです。

取引先の事業所に常駐する従業員の就労実態を把握する方法は、取引先との間で締結している契約が派遣契約であるか、請負契約(業務委託契約)であるかにより異なります。

  • 派遣契約の場合
    取引先との間で締結されている契約が派遣契約の場合は、派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」)の適用があります。派遣法第42条では、派遣先は、派遣労働者の労働日、労働時間、休日等の就業実態を把握するとともに、派遣元に対して、これを通知しなければならないとされています。
    そこで、派遣元の会社は、派遣先に常駐する従業員の労働日、労働時間、休日等の就労実態については、派遣先から派遣先の管理台帳に記帳されたこれらの事項に関する内容を連絡してもらうことで把握することができます。
     
  • 請負契約(業務委託契約)の場合
    他方、取引先との間で締結されている契約が請負契約あるいは業務委託契約の場合、常駐する従業員の就労実態の把握は、原則として自社で行うことになります。
    この場合の対応方法としては、次のようなものが考えられます。

    (1) 自己申告制により始業・終業時刻の確認・記録を行う
    (2) 一つの事業所に複数の従業員が常駐している場合は、責任者を決めてその者に全員分の始業・終業時刻の確認・記録を行わせる
    (3) 常駐する従業員の始業・終業時刻の確認・記録を取引先に依頼する

    (1)の自己申告制による場合は、前述の通達により、下の表に記載する措置を講ずることが必要であるとされていますが、(2)の方法による場合でも、同様の措置が必要と思われます。
    (3)のように取引先に従業員の始業・終業時刻の確認・記録を依頼するケースもあると思われますが、いずれにしても、取引先に常駐する従業員の就労実態の把握については、事業者間の連携が大切です。

自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

(ア) 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

(イ) 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査すること。

(ウ) 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。

また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」
(平成13.4.6付基発339号)

「派遣」と「請負」の区分が難しいのですが、具体的にどのような基準で判断すればよいのでしょうか?

「派遣」と「請負」の区分については、「労働者派遣事業と請負により行われる事業の区分に関する基準を定める告示」(告示37号)に基づいて判断することになります。

システム開発などを目的として自社のSEを取引先の事業所に常駐させるような場合、「派遣」か「請負」かの区分が必ずしも明らかでないことが少なくありませんが、「派遣」と「請負」の区分に関しては、「労働者派遣事業と請負により行われる事業の区分に関する基準を定める告示」(告示37号)があります。

告示37号では、請負として取り扱うための要件として、次のような事項が定められています。

  • 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと
  • 業務処理の資金につき、自らの責任の下に調達し、かつ支弁すること
  • 労働者の始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと
  • 労働者の労働時間を延長する場合または労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理を自ら行うこと

これらの要件を満たさない請負により行われる事業は、職業安定法第44条が禁止する「労働者供給事業」または「違法派遣」となり、その事業の目的が労働者の派遣を事業として行うことにある場合には、労働者派遣事業を行うものとして派遣法が適用されることになります。

「労働者派遣」と「労働者供給」は、どのように異なるのでしょうか?

労働者派遣は、労働者供給のカテゴリーの中で、労働者派遣法により特例的に認められた雇用形態です。

「労働者供給」とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法第2条第1号に規定する「労働者派遣」に該当するものを含まないとされています(職業安定法第4条第6号)。

供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合で、供給元と労働者の間に雇用契約がないものについては、すべて労働者供給に該当することになります。

また、供給元と労働者の間に雇用契約がある場合であっても、供給先が供給契約に基づき労働者を雇用して労働に従事させるもの(労働者派遣事業と職業紹介事業の双方の許可を受け又は届出をした者が、派遣労働者・派遣先の間の雇用関係の成立のあっせんを行うことを予定した紹介予定派遣とは異なるもの)については、労働者派遣には該当せず、労働者供給になります。

このように、労働者派遣と労働者供給は、派遣(供給)元・派遣(供給)先・労働者の三者間の関係という点でよく似た構造となっており、労働者派遣は、労働者供給のカテゴリーの中で、労働者派遣法により特例的に認められた雇用形態といえます。

二重派遣であることを知らずに派遣社員を受け入れていた場合は、罰則の適用はない。

「二重派遣」とは、派遣元企業から労働者派遣を受けた派遣先企業が、当該派遣労働者をさらに業として派遣することをいいます(派遣元に雇用された社員をさらに次の派遣先へと2回、3回、4回と重ねて派遣することは「多重派遣」といわれます。)。
 

二重派遣が行われた場合、最初に派遣を受けた派遣先企業(A社)と派遣元企業(B社)から派遣された労働者との間に直接の雇用関係がないため、最初の派遣先企業(A社)が次の派遣先企業(当社)に当該労働者を派遣した場合は、労働者派遣法上の労働者派遣には該当しないことになります。

そして、労働者派遣法上の労働者派遣事業に当たらない労働者派遣は、違法な「労働者供給」に該当することになります。
 

二重派遣は、職業安定法第44条の規定に違反するものです。同条に違反した場合には、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(職業安定法第64条第9号)という罰則の適用があります。また、この罰則は、労働者供給事業を行った側と受け入れた側の双方に科されるものです(ただし、派遣された労働者には罰則の適用はありません。)。
 

しかしながら、罰則の適用は、故意の場合に限られるのが原則ですので、二重派遣を受け入れた側が二重派遣であることを知らずに受け入れていた場合には、罰則の適用はありません。

ただし、二重派遣であることが発覚した後も、継続して当該派遣労働者を自社の指揮命令下において労働に従事させた場合には、故意があると認められて罰則が適用される可能性がありますので、派遣社員を受け入れた後から二重派遣であることに気付いたような場合には、直ちに二重派遣による違法な状態を解消することが必要となります。

二重派遣を解消する方法としては、派遣元企業にその派遣社員を雇用させたり、派遣元企業が直接雇用する他の社員を派遣してもらったりすることなどが挙げられます。

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