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1.BYODとは?

昨今、私物のスマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン、携帯電話などのモバイル端末を業務に利用するBYOD(ビーワイオーディー)が、世界的にビジネスマンの間で広がりを見せています。

BYODとは、"Bring Your Own Device"の略で、個人所有の端末の業務利用を指します。米国では有職者の80%が個人所有のデバイスを仕事に使用しているとの調査結果があります。

IDC Japanが2013年1月に公表した「国内BYOD利用実態調査結果」によると、許可・無許可にかかわらず、私物のモバイル端末を業務利用している日本国内のユーザーは、2011年11月時点において192万人で、5年後には1,265万人にまで拡大する見通しとのことです。

2.BYODのメリットとは?

BYODには、社員と企業の双方にとって次のようなメリットがあります。

社員のメリット
  • 好きな高機能モバイル端末を選択できることで仕事の効率が上がる
  • 使いなれた私物の高機能モバイル端末を使うことで仕事の効率が上がる
  • 最新機種や最新のOSをいち早く利用できる
  • 業務用と私物の両方を持ち歩かなくてすむ
  • 社内システムにアクセスして業務用メールやスケジュール確認などの業務をこなせる一方で、私用メールのチェックもできる
  • 私物のモバイル端末は常時携帯しているので、いつでもどこでも仕事ができる
会社のメリット
  • 社員の私物を使うため機器代金がかからない
  • 貸与時や機種変更時におけるトレーニングが不要
  • 通信費・パケット料金等の基本料金を利用者負担にした場合、毎月の経費が発生しない
  • 端末の管理や故障対応などの管理部門における業務が不要

3.BYODのデメリットとは?

BYODには社員と会社の双方にとって2.で記載したようなメリットがある一方で、次のようなデメリットがあります。

社員にとってのデメリット
  • 業務上発生した通信費を自己負担させられる場合がある
  • ソフトやアプリケーションのインストールについて会社から制限を受ける場合がある
  • いつもでもどこでも仕事ができるため、労働時間が長時間化したり、不規則になる可能性がある。
  • 紛失したり盗難にあった場合に、会社から責任を問われる可能性がある
  • トラブル発生時に会社から端末の提出を求められた場合、プライバシーを侵害される可能性がある
会社にとってのデメリット
  • 社員のプライベートデータと業務用データが混在してしまう
  • セキュリティレベルが十分でない場合がある
  • 業務外でどのような使われ方がされているのかを完全にチェックすることができない
  • 労働時間が増加し、労働法上の問題が発生する可能性がある
  • 社員が不正なソフトやアプリケーションをインストールしてウィルスに感染した場合、社内システムもウィルスに感染してしまい、情報漏えいに繋がる可能性がある
  • 端末の中に前職の会社の営業秘密やデータが残っている可能性がある
  • 退職する際に、会社の営業秘密や社内データを端末に入れまま退職社員にもっていかれてしまう可能性がある
  • 社員が社外から社内システムにアクセスして営業秘密や社内データを取得し、個人向けクラウドサービスを利用して個人で利用しているクラウドサーバに預けた場合、不正取得の証拠が残りにくく、情報漏えいなどのトラブルを発生させる温床になりやすい
  • トラブル発生時に社員に私物のモバイル端末の提出を求めた場合、プライバシーを理由に
    拒否される可能性がある
  • 紛失・盗難などにより個人情報が漏えいした場合に、会社の責任が問われる可能性がある

4.BYODにかかる企業のリスクマネジメント

社員の私物のモバイル端末を業務に利用させるBYODは、会社にとって、業務効率のアップや経費削減などのメリットがある一方で、セキュリティ上の問題や情報の一元管理を行う上での問題があります。

そのため、BYODを導入する際には、次のようなリスク対策をしっかり行うことが必要となります。

セキュリティー対策

セキュリティ対策については、平成18年4月に総務省が公表した「職場外のパソコンで仕事をする際のセキュリティガイドライン」を参考にして、「ルール」を策定したうえで、「人」および「技術」の面からの対策を講じることがよいと思われます。

機密情報の取扱い

BYOD特有の問題として、例えば、会社の機密情報の取扱いについては、不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されるためには、情報を送受信する際に秘密指定を行い、プライベートデータと区別して保管するなどの取扱いが求められるなどの点について注意を要します。

人的対策

人的対策としては、次のような対応が求められます。

  • BYODに伴うリスクを社員に理解させること
  • 社内ルールを周知すること
  • 私物の端末内に前職における機密情報が残っている場合には消去させること
  • 退職時には会社の機密情報を端末内部に残したまま退職してしまうことがないように、端末内に記録されている営業秘密や個人情報を消去させ、それらの情報が当該端末内部に残されていないことを書面で誓約させること
情報の一元管理

トラブル発生時において会社が情報の一元管理を行うためには、社員に対してBYODを認める際に、会社が社員の私物の端末を調査する必要が生じた場合には、電子メールデータや文書データを含む一切のデータについて閲覧・複写することに同意する旨の書面を提出させることが必要であると思われます。

BYODを導入する企業のリスクマネジメントとして、これらの対策を講じることは、必須のものと思われます。対策が不十分なままにBYODを黙認し、トラブルを発生させた場合には、企業としての情報管理体制について、法的責任を問われる可能性があることは否定できません。

5.「シャドーIT」の問題

ここまで、個人所有のデバイスの業務利用を意味するBYODについて説明してきましたが、BYODに関連して企業のIT部門が抱えている最近の問題として、「シャドーIT」の問題があります。

シャドーITとは、管理者(例えば、IT部門)の目の届かない場所で行われるIT活用全般を指す広い概念です。スマートフォンやタブレット端末などにかかるシャドーITは、大まかに分けて、次の3つに分類することができます。

  1. 会社支給端末の社外 (私的) 利用
    セキュリティ・リスクの例:業務外の通信・通話などの不正な利用、アクセス権限を有していない会社の機密情報の盗聴・覗き見、業務データの持出など
  2. 私物端末の社内 (業務) 利用 (会社の許可を得ていないBYOD)
    セキュリティ・リスクの例:業務上の情報とプライベート情報の混在、業務上好ましくないアプリケーションやサービスの利用、マルウェア感染および社内システムへの拡散、セキュリティ・レベルの不備、デバイスが有する各種機能の利用制限の不可
  3. 私物端末の社外 (私的) 利用
    セキュリティ・リスクの例:就業時間外に私物端末を利用してソーシャルメディア上に業務上知り得た情報を投稿することによる情報漏えい

株式会社アイ・ティー・アール(ITR)が2011年10月から11月にかけてITmediaと共同で行ったアンケート調査によると、非公式に個人所有のスマートフォンを業務利用しているとした回答者の割合は19.8%に達しており、他のデバイス(タブレット端末7.2%、携帯電話12.9%など)と比べても高い割合を示しています。

シャドーITの問題は、実はBYODと深く結びついています。会社がセキュリティ上の問題からBYODを禁止したとしても、その影で、会社に隠れてこっそり個人所有のスマートフォンなどのデバイスを業務利用する従業員が増えていけば、会社の知りえないところでセキュリティ・リスクがどんどん増大していくことになります。

であるとすれば、会社が運用ルールをきちんと定め、セキュリティ対策を講じたうえでBYODを認めることは、シャドーITによる企業のセキュリティ・リスクを低減させることに繋がるものと思われます。こうした点からも、今後、BYODを導入する会社は増えていくものと思われます。

6.就業規則・規程類の整備

BYODを導入するにあたっては、個人所有のスマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスの利用にかかる規程(BYOD利用規程)の作成のほか、電子機器利用規程、電子メール利用規程、機密情報取扱規程、個人情報取扱規程などの既存の規程類の見直しが必要となります。

また、既存の就業規則に私物の持込み禁止に関する条項やモニタリングに関する条項等がある場合には、これらの規定に関して、BYODの導入を前提とした規定内容に変更することが必要となります。

BYOD利用規程のサンプルとしては、平成25年7月11日に、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)が「私有スマートデバイス取扱規程サンプル第1版」http://www.csaj.jp/info/13/130711_rule.pdfを公表していますので、こちらを参照して、自社のBYOD運用方針に合わせた内容の規程を作成することがよいと思われます。

CSAJのサンプル規程は全13条で構成されており、次の事項について規定しています。

サンプル規程 条項

第1条 (目的) BYOD利用規程の目的
第2条 (対象) 適用対象者
第3条 (定義) 適用対象機器
第4条 (利用許可) BYOD利用許可申請手続、および機種変更、利用終了、退職の際における手続
第5条 (費用負担) 通信費用、保守費用等にかかる費用負担
第6条 (善管注意義務) BYOD利用者の管理・運用にあたっての注意義務
第7条 (監査) BYOD利用者に対する会社による随時の監査権
第8条 (緊急措置) 紛失・盗難等、情報漏えいなど緊急事態が発生した際の措置
第9条 (免責) BYOD利用者に生じうる損害に対する会社の責任の免責
第10条 (懲戒) BYOD利用規程等に違反した場合の懲戒手続き
第11条 (損害賠償) BYOD利用規程等に違反したことによる賠償責任
第12条 (相談窓口) BYOD利用にかかる会社の相談窓口
第13条 (施行・改訂)

BYOD利用規程を作成したら、その内容を社内研修の実施等を通して社員に周知することが必要となります。

BYOD利用の具体的対応について社員の理解を高めるためには、BYOD利用規程とは別に、BYOD利用に伴う具体的な遵守事項や禁止事項に関して行動指針(ガイドライン)を作成することがよいと思われます。

ガイドラインに記載すべき事項としては、次のようなものが挙げられます。

ガイドライン記載事項

  • BYOD利用申請手続き
  • 指定外クラウドサービス等の利用の禁止
  • 業務用データとプライベートデータの保存場所の区分
  • アカウントおよびアプリケーションの使い分け
  • アプリケーションダウンロード時における注意事項
  • 許可されていないサイト・システムへのアクセス制限
  • 位置情報取得に関する注意事項
  • 故障時の対応
  • 紛失・盗難時おける連絡方法および対応
  • バックアップおよび同期に関する注意事項
  • データ保存場所に関する注意事項
  • デバイスにかかる費用負担の取扱い
  • BYOD終了時における手続き

BYODを導入する企業は少しずつ拡大する傾向を見せていますが、運用方針や運用の範囲は各社各様であり、決して一律ではありません。

BYODの導入を検討中の会社においては、まず、自社におけるデバイスの利用状況や情報セキュリティシステムの状況について把握することが求められます。

そのうえで、BYOD導入の目的を明確にし、運用方針や適用範囲について十分に検討し、遵守させるべき事項や禁止事項の洗い出しを行い、自社におけるBYOD利用ルールを定めることが大切です。

厚生労働省では、心理的負荷による精神障害の労災認定基準を新たに定め、平成23年12月26日付けで厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html

これまで、心理的負荷による精神障害の労災認定については、平成11年9月の労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(基発第544号)に基づいて、業務上外の判断が行われてきました。

しかし、近年、精神障害の労災請求件数は増加傾向にあり、また、認定の審査にはこれまで平均約8.6か月を要していたことから、審査の迅速化や効率化を図るため、新しい基準が策定されました。

新しい認定基準のポイント
  1. 分かりやすい心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)
  2. いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、
    その開始時からのすべての行為を対象として心理的負荷を評価することにした
  3. 精神科医の合議による判定を判断が難しい事案のみに限定した

特に【1】については、業務による心理的負荷(ストレス)の評価基準について、具体的な数値が明記されるようになりました。

「特別な出来事」とされる「極度の長時間労働」については、月160時間程度の時間外労働と明示され、「心理的負荷が極度のもの」については、強姦やわいせつ行為等が例示されています。

また、強い心理的負荷となる時間外労働時間数については、次のような具体的な数値が示されています。

  • 発病直前連続した2か月間に、1月当たり約120時間以上
  • 発病直前連続した3か月間に、1月当たり約100時間以上
  • 「中」程度と判断される出来事の後に、月100時間程度

厚生労働省では、今後はこの基準に基づいて審査の迅速化を図り、精神障害の労災請求事案について、6か月以内の決定を目指すとのことです。

うつ病などの精神障害の認定基準が分かりやすくなったことは、企業にとっても好ましいことであると思います。企業の労務担当者の方には是非、新しい認定基準についてご確認いただければと思います。

近時は、社員のメンタルヘルスにかかわる労働問題が多く発生していますが、その中でも最近の傾向として、「従来型のうつ病」とは異なる「現代型うつ病」を発症するケースが多くみられます。

従来型のうつ病と現代型のうつ病の相違点は、主に次のようなものです。

 

従来型うつ病

現代型うつ病

なりやすい年代

中年に多い

20代から30代に多い

なりやすい性格

  • 真面目
  • 几帳面
  • 他人への配慮を欠かさない
  • 良心的
  • 秩序を重んじる
  • 自己愛が強い
  • 他人へ配慮する傾向が乏しい

主な症状

  • 自分を過度に責める
  • 遅刻、欠勤の増加
  • 集中力が落ち、ミスが目立つ
  • 業務パフォーマンスが低下する
  • 不眠
  • 食欲の低下
  • 腹痛
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 腰痛
  • 腹部不快感
  • 便秘
  • めまい
  • 動悸
  • 他人を責める
  • 職場に来ると抑うつ気分に襲われるため出社できない(週末は遊べる)
  • 叱責されると過度に落ち込む(褒められると元気になる)
  • 頭が重い
  • イライラする
  • 疲労感が取れない
  • よく眠れない
  • リストカット
  • 摂食障害
  • 過食
  • 過眠
  • 体が鉛のように重い

症状の日内変動

目立つ

目立たない

現代型うつ病は、他責タイプ、モラトリアムタイプ、衝動性タイプ、気分反応性タイプなどのいくつかのタイプに分けることができます。

他責タイプ

「自分がうつ病になったのは職場のせい」と主張するタイプ。

あまり怒られたこともなく、挫折した経験もない、過保護に育てられた男性に多くみられる。現実の厳しさに直面するとすぐに逃げ出してしまう。職場に来ると抑うつ気分に襲われるため、出社はできないが、週末は遊べる。

モラトリアムタイプ

「この職場では自分がやりたいことができない」「現在の仕事にやりがいが見いだせない」と主張するタイプ。

不全感と倦怠感が強い。

衝動性タイプ

衝動性や不安・焦燥感が強いタイプ。

リストカット、摂食障害、不定愁訴(原因不明の身体の不調)を伴う。

気分反応性タイプ

叱責に弱く過度に落ち込むが、褒められると元気になるという気分反応性が認められるタイプ。

自己愛が強い若年女性に多くみられ、過食、過眠、体が鉛のように重いといった症状がだらだらと続く。

社員がうつ病を発症した場合、企業は安全配慮義務違反を問われる可能性があり、また、うつ病を発症した労働者やその家族から、損害賠償請求を受ける可能性があります。うつ病患者が自殺したようなケースでは、損害賠償の額は億単位に及ぶ場合があり、企業の存亡にもかかわる問題となります。

企業としては、こうしたリスクがあることを認識したうえで、平時よりうつ病対策を講じ、問題が発生した場合に備えて対応体制を整備しておくことが必要とされます。

しかし、中小企業の場合、社員数50名未満の会社には産業医の設置が義務付けられていないことやコスト面での問題、メンタルヘルス不調者への適正な配置が困難であることなどの理由から、大企業に比べて社内メンタルヘルス活動の実施レベルは低くなりがちです。

こうした中小企業のメンタルヘルス対策としては、国や地方公共団体、医療機関が設置している相談窓口を有効活用していただければと思います。

相談窓口設置機関

常勤職員と同じ仕事をしているのに賃金が低いのは違法だとして、奈良市の法テラス奈良法律事務所の非常勤職員の女性が日本司法支援センターに対して、常勤職員との賃金差額(約155万円)の支払いを求めて奈良地裁に提訴しました。

原告の職員は、仕事内容は、裁判で必要となる資料の作成や破産申立書の作成、無料法律相談の取次など、常勤職員の仕事内容と同じで、勤務時間もフルタイムであるが、賃金は常勤職員の約7割程度(日給7500円、月給13万円〜16万円)であり、こうした実態は、仕事内容が同じ場合の待遇差別を禁じたパート労働法に違反するものであるとしています。

法テラスを訴えた労働訴訟としては全国でも初のケースであり、原告の職員は、「社会的弱者を救済する公的組織が弱者を作り出すのは自己矛盾だ。他の非常勤職員の待遇を改善するためにも提訴を決めた」と話しているとのことです。

経済的困窮者への法律扶助などを目的として国が設立した機関で発生した訴訟事件であるだけに、今後、注目される可能性があるものと思われます。

東日本大震災への企業の対応

民間調査機関の財団法人労務行政研究所では、民間企業の人事労務担当者を対象として東日本大震災への対応アンケートを実施し、その調査結果を公表しています。

https://www.rosei.or.jp/contents/detail/32613

今回のアンケートは、企業の人事担当者からの問合せが特に多かった項目を中心に、主に東京、大阪、神奈川、愛知、千葉、京都、静岡、茨城、埼玉に所在する企業の人事労務担当者(405人)を対象として実施されました。

アンケート結果の概要は次のとおりです。

震災による被害・影響については、83%の企業が被害・影響を受けたと回答しており、特に、規模が大きく広域展開している企業ほど、影響を受けたとしています。

被災による休業日の賃金の取扱については、「賃金を通常どおり全額支払う」と回答した企業が43%と最も多くなっています。また、計画停電で休業した時間の取扱について、「賃金を通常どおり全額支払う」と回答した企業は35%です。

地震発生日の帰宅困難者への対応については、「社内施設の開放」は78%、「通常以外に要した(タクシー代など)交通費を全額支給」は53%の企業が実施しています。

その他、企業の人事部門が実施した対応については、「従業員の自宅待機を一定期間命じた」「採用活動を延期した」とする企業は各24%、「春季交渉(賃上げ・賞与等)の回答を延期した」企業は12%となっています。

3月11日の大地震後、1か月を経てもなお震度7以下の余震が各地で続いており、この余震は今後も1年近く続くのではないかという見方もされています。また、今夏は東日本地域における電力不足が強く懸念されており、計画停電が実施されることを前提とした対応策の検討が各企業において始められています。

企業としては、今回の震災時における自社の対応について振り返って検討・分析したうえで、今後再び同様の事態が発生しうることを前提として、災害時の対応について再度検討することが必要とされているものと思われます。また、計画停電や風評被害による影響など、今後の自社のビジネスに影響を及ぼすと思われます様々なリスク要因を洗い出し、対応策を検討することも必要であるかと思われます。

リスクマネジメントの在り方については企業ごとにリスク要因が異なるため、一概に、「これがベスト」というものはありませんが、他社の事例なども参考していただきながら、できるだけ早期に今後の対応策等について検討していただければと思います。

東日本大震災及び原発事故による被害の拡大に伴い、外国人労働者に帰国者が急増したため、外食や農業、語学教室、IT系企業などの外国人労働者の労働力への依存率が高い産業分野において、人手不足が深刻化しています。

特に、接客スタッフとして多くの外国人労働者を雇用する外食産業で大きな影響がでており、一部の店舗では営業時間を短縮するなど、急場の対応策に迫られています。

少子高齢化が急速に進む日本では、外国人労働者の雇用は必要不可欠なものとなりつつあります。ただし、外国人労働者の雇用に関しては、様々な規制が設けられていますので、企業としては注意が必要です。外国人労働者の雇用にかかわるトラブル防止のための主な留意点として、次のようなものがあげられます。

  1. 外国人の雇用に際しては、就労させようとする仕事の内容が在留資格の範囲内の活動か否か、在留期間が過ぎてないか否かを確認する。
  2. 不法就労に当たる外国人を雇い入れない。
  3. 違法な仲介業者から外国人を雇い入れないように注意する。
  4. 外国人労働者にも労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働関係法令の適用がある。
  5. 労働関係法令の内容について、できるだけ外国人労働者の母国語で周知する。
  6. 労働条件通知書(できるだけ労働者の母国語のもの)を交付する。
  7. 労働災害防止、安全衛生の確保に努める。
  8. パスポートを会社で預かったり、保管したりしない。
  9. 常時10人以上の外国人を使用する事業所では、外国人雇用労務責任者を選出して外国人労働者を管理することが義務付けられている。
  10. 雇い入れ、離職の際にはハローワークへの届出が必要。

なお、外国人労働者の雇用にあたっての疑問については、ハローワークが無料で相談に応じています。また、外国人労働者の雇用管理の改善や、職業生活上の問題について相談に応じるため、各都道府県労働局では、専門的な知識を有する外国人雇用管理アドバイザーが配置し、各事業所の雇用管理の実態に応じた相談・指導を行っています。

今回の大震災や原発事故を機に、外国人労働者の労働力に依存している現状について見直すべきとの見解も一部あるようですが、経済のグローバル化が進む中、外国人労働者の活用は今後も必須であるものと思われます。

企業としては、外国人労働者を適正に雇用・管理する一方で、外国人労働者が働き易い環境を整えることによって、外国人労働者の労働力を有効に活用することに努めることが必要であるものと思われます。

労働問題におけるデジタルフォレンジックの活用

データ復旧サービスを提供する会社が東関東大震災で被災した行政や企業、あるいは個人の方の要請に応じて、津波で流されてしまったパソコンやサーバの中のデータを復元するサービスを無償あるいは特別価格で提供していることがニュースで取り上げられています。

ある企業経営者は、瓦礫の中からパソコンを探し出してデータ復旧会社に持ち込み、ハードディスクの中のデータを復元させることに成功したことから、このデータに基づき債権回収を行い、従業員に対しても給与を支払うことができたとのことでした。

デジタルデータを復元する技術は、先般、大相撲の八百長問題に関する調査の際にも、力士らの携帯電話のメールデータを収集・分析するために活用され、一般にも広く認識されるようになってきたように思われます。
 

犯罪や法的紛争が生じた際に、原因究明や捜査の目的で、情報機器や電子的記録等を収集・分析し、そこで取得した情報の法的な証拠能力を担保するための手段や技術を総称して「デジタルフォレンジック」といいます。

「フォレンジック」という文言には、「法医学」「科学捜査」「鑑識」などの意味があり、「デジタルフォレンジック」を分かりやすく言い換えると「デジタル鑑識」となります。
 

デジタルフォレンジックの実施対象は、パソコンやサーバ、携帯電話、情報家電などのデジタルデータを扱う機器全般です。現在のようなIT社会では、パソコンや携帯電話などの情報機器の利用が広く普及していることから、メールなどのデジタルデータに、企業間紛争の原因となった事実や、不正アクセスや機密情報漏えいなどの犯罪行為の決定的な証拠となるものが含まれているということも少なくありません。

デジタルフォレンジックを活用すれば、パソコンのハードディスクから証拠となるファイルと抽出したり、サーバのログから不正アクセスの記録を割り出したり、破壊・消去されたディスクを復元して証拠となるデータを押収したりすることができます。

また、コピーや消去・改ざんが容易であるというデジタルデータの特性に対応するため、デジタルフォレンジックには、データがねつ造されたものか否かを検証するための技術や、データが改ざんできないようする技術、ハッシュ値やデジタル署名などにより同一性を保全したりする技術も含まれています。
 

労務管理の目的でデジタルフォレンジックが活用されることもあります。会社のパソコンを使って転職活動を行っている、業務と関係ないウェブサイトにアクセスしている、顧客情報ファイルを外部記録媒体に書き出したなどの従業員による不正な行為の痕跡は、様々な形でハードディスクに残りますので、デジタルフォレンジックによりこうした従業員の不正な行為を確認することができます。

さらに、これらの行為に基づき懲戒処分に付した従業員等が訴訟で処分無効を争ってきた場合、デジタルフォレンジックで得られた調査結果を証拠として裁判所に提出することもできます。
 

米国では、訴訟の際に関係者のパソコンに対してデジタルフォレンジックが行われ、証拠として提出されることがよくあります。日本においても、デジタルフォレンジックが活用される場面が次第に多くなってきているように思われます。

一部の企業ではデジタルフォレンジックを内部統制のためのツールとして活用し、内部監査部門が内部通報に基づき不正行為が疑われる従業員や役員のパソコンをデジタルフォレンジックで調査するなどしています。
 

デジタルフォレンジックは、今後ますます活用される場面が多くなるように思われますが、企業の人事・総務の管理部門の方や内部監査に携わる方には是非、デジタルフォレンジックの活用の可能性について認識しておいていただければと思います。

厚生労働省が新卒者・既卒者支援を強化

厚生労働省は、平成23年3月29日、東北地方太平洋沖地震により内定先への就職や連絡が困難な学生・生徒の方の相談に対応するための特別相談窓口を全国のハローワーク(震災特別相談窓口)および新卒応援ハローワーク(学生等震災特別相談窓口)に設置することを公表しました。

去る3月22日には、新卒者・既卒者支援を強化する目的で、東北地方太平洋沖地震による採用内定取消しを防止し、また、震災の影響を受けた新卒者が就職できるよう、厚生労働大臣と文部科学大臣の連名により主要経済団体など258団体に対して要請を行っています。

厚生労働省による新卒者・既卒者支援の詳細については、以下のサイトでご確認ください。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/22.html#03

災害時における雇用保険失業給付の特例措置

東北地方太平洋沖地震に伴う雇用保険失業給付の特例措置

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/koyouhoken07.pdf

厚生労働省では、災害時における雇用保険失業給付について次のような特例措置を設けています。

  1. 事業所が災害を受けたことにより休止・廃止したために、休業を余儀なくされ、賃金を受けることができない状態にある方については、実際に離職していなくても失業給付を受給できます。
  2. 災害救助法の指定地域にある事業所が災害により事業が休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた方については、事業再開後の再雇用が予定されている場合であっても、失業給付を受給できます。

    ※災害により直接被害を受け、事業所が休止・廃止になり、休業した場合または
    一時的な離職をした場合が対象となります。

詳細につきましては管轄のハローワークにお問合せください。

計画停電実施に伴う休業の場合の休業手当の支払いについて

今回の東北地方太平洋地震による計画停電に関しまして、厚生労働省労働基準局監督課長から、次の通達(平成23年3月15日付基監発0315第1号)が出されています。

http://www.tokyokeikyo.jp/110315tsuutatsu.pdf

この通達によれば、計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として、労働基準法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないとされています。

つまり、労働基準法第26条では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合には、使用者は平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないとしていますが、今回の計画停電による休業は「使用者の責めに帰すべき事由」には該当しないことから、使用者は労働者に対し、60%以上の休業手当を支払わなくても良いということです。

計画停電の時間帯以外の休業は、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するとされていますが、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯を含めて原則として第26条の「使用者の責めに帰すべき事由」に該当しないとされています。

また、計画停電が予定されていたために休業としたところ、実際には計画停電が実施されなかった場合には、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえて判断することとされています。

今回の震災により多大な影響を受けられた経営者の方は少なくないものと思われます。心よりお見舞い申し上げます。

被災された経営者の皆さまは、今、本当に大変な局面に立たされていらっしゃることと存じます。ただ、こんなときであればこそ、冷静かつポジティブ思考で、困難な状況を乗り越えていただきたいと思います。当方におきましても、経営者の皆さまにとって有益な情報をできる限り発信させていただきたいと思っております。

厚生労働省が公表している救援・支援対策

厚生労働省が発信しているメールマガジンに下記の内容が掲載されていますのでご参照いただければと思います。

厚生労働省では、現地連絡本部を設置し、被災状況を把握するとともに、各種の救援・支援対策に当たっています。

主な対策
  • 被災された方は、被保険者証がなくても医療機関での受診ができます。

  • 保険者の判断により、健康保険の一部負担金の減免や保険料の納付期限の延長などができます。

  • 被災地域の事業所へは、厚生年金保険料及び労働保険料等の納付期限の延長・猶予を行います。

  • 事業所が災害を受け、事業を休止したなどの理由により就労ができず、賃金を受けとれない状態にある方は、失業給付が受給できます。

  • 被災された方の失業給付は、住所地以外のハローワークでも受給できます。

  • 緊急避難している方の一時入居先、緊急避難場所として雇用促進住宅を提供します。

  • 労災保険給付の請求に関して、事業主や病院などの証明が困難な場合は証明がなくても請求を受け付けます。

また、今回の地震に伴う傷病の業務上外等の考え方についてのお問合せは労働局でお受けしております。

詳しくはこちら (別紙3「これまでに発出している通知等」をご覧ください)

※ハローワーク、労働基準監督署、年金事務所の開庁状況もお知らせしています。

政府の最新対応状況

天災地変による負傷は、業務外のことであるため、原則として労災の適用はありません。

ただし、天災地変による災害の労災認定については、従前、被災労働者が、作業方法、作業環境、事業場施設の状況等からみて危険環境下にあることにより被災したと認められる場合には、業務上の災害として、取り扱われています。
 

たとえば、ブロック塀に補強のための鉄筋が入っていなかったため作業場でブロック塀が倒れて負傷した場合や、建物の構造上の弱さから建物が倒壊して負傷したなどの場合には、労災の適用が認められています。

もっとも、大震災のように天災地変が非常な強度を有している場合には、事業主の管理下の有無にかかわらず災害を受ける危険があり、業務上の危険な事情がなくても被災したと認められ、そのような場合には、業務起因性は否定されます。

また、地震による避難行動中の災害については、一般的に、業務行為中に事業場施設に危険な事態が生じた場合において、労働者が業務行為の継続が困難と判断して、その危険を避けるために、避難する行為は合理的な行為として認められ、そのような合理的な行為の際に被った災害は、業務起因性が認められるとされています。
 

労災の適用については個々の事案に応じて業務上外の判断が行われることになりますので、管轄の労働基準監督署にご相談いただくことが必要となります。

なお、今回の東北地方太平洋地震に伴う傷病の業務上外等の考え方についての問合せは、労働局で受け付けていますので、ご相談いただければと思います。

ウェスティンホテル東京のホテル内の飲食店のアルバイト店員が、平成23年1月11日夜に、有名スポーツ選手が女性タレントと来店したことを個人のtwitterアカウントでつぶやき、「今夜は2人で泊まるらしいよ」などと書き込みました。

この書き込みに対し、「アルバイトとはいえ訪れた著名人の情報を暴露するのは問題ではないか」などの批判が集中したことから、このアルバイト店員はtwitterアカウントを削除しましたが、ネット掲示板でアルバイト店員の個人情報が特定されるなど、いわゆる「祭り」が発生しました。

かかる事態を受けて、同月12日夜、同ホテルでは、総支配人名で同ホテルのホームページ上において「[総支配人より]お詫びとご報告」として、本件について謝罪し、経緯及び今後の対応について公表しました。

http://www.westin-tokyo.co.jp/initiative/index.html#140

公表された謝罪文によれば、同ホテルでは社員・アルバイトにかかわらず全ての従業員に対し、入社時にお客様情報の守秘義務等に関する研修を行ったうえで、契約書に署名させているとのことです。

それにもかかわらず、今回問題となった従業員は、特定のお客様の来店について情報発信していたとのことであり、同ホテルでは、問題となった従業員に対して厳しい処分を下すと共に、全従業員へのお客様情報の守秘義務等に関する教育を再度徹底し、再発防止に全力を挙げて取り組むとのことです。
 

ホテルの場合、お客様の来店情報が外部に漏れるという事態は、即そのホテルの信用問題に繋がるものであることから、お客様情報については厳重に管理し、漏えい等の問題が生じないようにすることが重要となります。

今回の事態は、ウェスティンホテルの信用を毀損し、レピュテーションを低下させかねないものといえます。

ただ、問題が発生した翌日には謝罪文が公表されており、また、お客様情報を秘密に管理するために、テナントの従業員まで含めたすべてのホテル従業員に対して守秘義務研修等を行って誓約書に署名させていることなど、秘密情報の保護のために同ホテルがとっている安全管理体制について言及することにより、迅速かつ有効なレピュテーションマネジメント対応が行われており、この点において評価しうるものと思われます。

このような迅速かつ有効な対応が行われた背景には、同ホテルでは従業員等によるお客様情報の漏えいリスクについて認識し、ネット上の書込情報等について日常的な監視を行い、リスクが顕在化した場合の対処法などについても事前の検討がなされていたというような事情があったのではないかと思われます。

ブログやtwitterなどの利用によりインターネット上で個人情報などの情報漏えいが発生した場合、リアルの世界での情報漏えいとは比較にならないほど、情報の拡散が急速に進む可能性があります。特に、今回のように、有名人の個人情報や大衆の興味をそそるような内容の情報が漏えいした場合には、情報拡散のスピードが高まり、情報漏えいの被害も大きくなるものと思われます。
 

情報漏えいによる損害を被るのは、情報を漏えいされた本人だけではありません。情報を管理する立場にある企業等についても、その管理状況や管理体制についての責任が問われることになります。

具体的には、情報を漏えいされた本人から慰謝料などの損害賠償請求を受けたり、また、企業等の信用が毀損され、その収益等について多大な影響を受けるなどの風評被害を受けることになりかねません。

風評被害の発生事由や発生時の影響度は、業界ごとによって異なります。企業としては、自社が行う事業に関して発生しうる風評リスクについて把握したうえで、風評リスクマネジメント(レピュテーションマネジメント)を適切に実施することが必要とされているものと思われます。

2010年11月1日に社会的責任(Social Responsibility)(注※)の国際規格であるISO26000が正式発行されました。

これを受けて、ISO/SR国内委員会では、「やさしい社会的責任 ―ISO26000と中小企業の事例―」を公表し、主に中小企業の方を対象にISO26000のポイントをわかり易く解説しています。

本書は、日本の中小企業の方がISO26000を理解し、社会的責任に関する取り組みを行ううえでの手引きとなることを目的として作成されたものです。社会的責任に取り組むときの留意点や、中小企業などにおける実践例などが紹介されていますので、是非、ご参照いただければと思います。

(注※)
社会的責任(Social Responsibility)とは、組織活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して組織が担う責任のことです。

企業が発展していくにあたっては、子会社や関連会社を傘下にしてグループを編成したり、あるいは、他の企業との売却・買収といったグループをまたいだ再編が行われることがしばしばです。企業が人と物との有機的結合体である以上、企業再編が行われる際には、労働者の異動がつきものです。

ここでは、企業再編に伴う労働問題について、企業再編の種類ごとに、順次解説していきます。

合併に伴う労働問題

(1) 合併とは

「合併」とは、二つ以上の会社が契約によって一つの会社に合体することで、「新設合併」と「吸収合併」とがあります。

新設合併の場合は、当事会社の全てが消滅して新しい会社が設立されます。一方、吸収合併の場合には、当事会社の一つが存続し、他の会社は吸収されることにより消滅します。

法的効果としては、新設合併、吸収合併のいずれの場合においても、消滅会社の権利義務がすべて一括して法律上当然に移転し、合併前の権利義務がそのまま合併後の会社に承継されます。このように権利義務が移転することを「包括承継」といいます。

(2) 労働契約の承継

合併の法的効果は包括承継であることから、個々の労働契約も内容を変更することなく、そのまま新設会社あるいは承継会社に承継されることになります。

たとえば、A社とB社が新設合併した場合、旧A社の労働契約と旧B社の労働契約が内容を変更することなく、そのまま新設会社であるC社に併存することになります。

(3) 労働条件の統一

一つの企業において同一の業務に従事していながら、賃金が異なるということになると、労働者のモチベーションが低下したり、従業員間の関係をギクシャクさせたりするなど、労務管理上の支障が生じやすくなりがちです。

そのため、早期に労働条件を統一することが必要になります。労働条件を統一する場合、労働条件を労働者に有利に変更する場合には特に問題は生じませんが、労働者に不利益に変更する場合には、いわゆる「就業規則の不利益変更」の問題が生じます。

(4) 就業規則の不利益変更の合理性の有無の判断基準

就業規則の不利益変更の合理性の有無については、次の7つの基準に基づいて、これらを総合的に考慮して判断すべきであるとされています(最判H9.2.28第四銀行事件)が、中でも、(1)と(2)の基準が重要で、基本的にはこれら二つの相関関係で合理性が判断されることになります。

  1. 労働者が被る不利益の程度
  2. 使用者側の変更の必要性の内容・程度
  3. 変更後の就業規則の内容の相当性
  4. 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
  5. 労働組合等との交渉の経緯
  6. 他の労働組合または他の従業員の対応
  7. 同種事項における我が国社会における一般的状況

(5) 人事労務担当者として留意すべき事項

以前、大手電機会社2社が特定の事業を共同して推進するために新設会社を設立し、新設会社の就業規則を作成するにあたり、労働問題などが発生することによるリスクを回避するため、原則として双方の会社の就業規則のうち労働者により有利な条件の方を選択するという、いわゆる「いいとこ取り」の方法によったことがありました。

しかしながら、この新設会社は、人件費などの経費があまりに嵩み過ぎてしまい、数年のうちに解散することとなってしまいました。

企業が企業再編に乗り出す場合、事業の効率化や収益の向上などを目的とすることが通常であるかと思われますが、再編後の会社において、給与規程などを含む就業規則について、安易な方法で作成してしまうと、本来の目的の達成を妨げることになりかねません。

複数の就業規則の内容を統一することは決して簡単なことではありません。新たな就業規則を作成するにあたっては、会社が置かれている状況や、会社が属している業界における平均的などについても配慮しながら検討することが必要となります。その際、個々の条件について検討するだけでなく、就業規則全体として相当な内容となっているか否かを検討することが重要です。

労働者が被る不利益と使用者側の変更の必要性を比較考量しながら、どちらか一方に過度な負担を強いるのではなく、双方にとって納得がいくものとなるよう、全体のバランスを常に意識しながら作成していただければと思います。

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